今はまだ人生を語らず

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今はまだ人生を語らず
よしだたくろうスタジオ・アルバム
リリース
録音
ジャンル
レーベル Odyssey/CBS Sony
プロデュース 吉田拓郎
チャート最高順位
  • 週間1位(オリコン
  • 1975年度年間4位(オリコン)
  • 週間21位(オリコン、2022年盤)[1]
よしだたくろう アルバム 年表
よしだたくろう LIVE '73
1973年
今はまだ人生を語らず
(1974年)
ベスト・コレクション
1975年
『今はまだ人生を語らず』収録のシングル
  1. 「シンシア」
    リリース: 1974年7月1日
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今はまだ人生を語らず』(いまはまだじんせいをかたらず)は、1974年12月10日吉田拓郎(当時はよしだたくろう)がリリースしたオリジナル・アルバムである[2][3]。完成度の高さから拓郎の最高傑作アルバムという評価もある[4][5]

背景

アルバムタイトルは、収録曲である「人生を語らず」の歌詞に由来し、森進一に提供した「襟裳岬」をはじめ、猫に提供した「戻ってきた恋人」、かまやつひろしとデュエットした「シンシア[注釈 2]」などが収録されている。

アルバムリリースは1974年末で、翌1975年にはツアーを行っていない。そのためアルバムリリースに合わせてライブツアーを行うという従来のパターンからは外れている。一方で、1975年夏の「吉田拓郎・かぐや姫 コンサート インつま恋」ではこのアルバムからの全12曲が演奏されている。

音楽性

ペニーレインでバーボン

歌詞は政治色の強い内容となっており[6]バーボンを燃料にして酩酊感と諦観を抱えながら宵闇に向かって吠え続ける男のやるせない独白劇となってる[3]。息継ぎすることすら忘れたかのような歌唱にはまごうことなき"ロックスピリッツ"が宿り、抗い難い魅力を放つ[3]。"フォークの旗手"と称され、期せずして先頭のポジションに就かざるを得なかった"シンガーソングライター吉田拓郎"の心情を克明にドキュメントした本作を象徴する1曲といえる[3]

当時拓郎はバーボンに凝っており[7]、ペニーレインは、1974年にビートルズの楽曲である「ペニー・レイン」から店名を取ってオープンした原宿ジャズ喫茶[3][8]、拓郎が「ペニーレインでバーボン」と唄ったことで一躍脚光を浴び、"フォーク聖地"、"1970年代原宿の象徴"などといわれた[8][9][10][11]。フォーク、ニューミュージック系のミュージシャンやファッション関係者などの業界人が集い修学旅行のコースにもなった[8][9][11][12]。開店当時は原宿はまだ街としては初々しく静かな街だったが[8][13]、流行の発信地としての原宿に貢献したお店の一つであった[8]。1990年に閉店したが、2006年に復活し、2014年現在も営業している[9][14]

2014年、拓郎ファンの重松清が初めて舞台原作となる「あの頃僕らはペニーレインで」を書き下ろし、朗読劇として5月上演される[9][11][14]

拓郎は1984年のアルバム『FOREVER YOUNG』で、アンサーソングである「ペニーレインは行かない」という曲を発表している。

みうらじゅんは「拓郎さんが『今はまだ人生を語らず』と言っている頃、ユーミンはアルバム・タイトルに『コバルトアワー』と付けた。時代が移り変わってゆく何かを、僕らは拓郎さんに少し遅れて感じていたに違いない。1960年代後半から僕たちの青春のテーマ"気まま"や"おいら""旅""人生"はすべて拓郎さんが作り上げたイメージの詩。荒井由実さんが新しく投げかけた『コバルトアワー』やシングル・ヒットした『翳りゆく部屋』とは世界観が全く異なってしまいました。山手お嬢さん的に歌うそれは、"わしらのフォーク村"とはかけ離れていた。でも拓郎さんは『今はまだ人生を語らず』と語ってくれたんです。僕にとって、いや初期からファンだった者すべての最後の拠り所がこのアルバムだったのではないでしょうか。ニューミュージックというジャンルが台頭し始め、オシャレな歌が街中にはびこったが、不思議と拓郎さんはニューミュージックとは感じなかった。ジャンルはやはり"拓郎節"だったからです。時代を先取りしていく才に長けた拓郎さんのことだから、次を見据えてこのアルバムを作ったのだと今は感じる。『襟裳岬』なんてその代表的な作品ではないでしょうか。僕は拓郎さんではなく自分に成らなきゃならない時を遂に迎えたのです。上京してまず原宿ペニーレインに行って、当然バーボンを頼んだ(笑)。更に僕は拓郎さんの後追いでアパートも聖地"高円寺"に移りました。この『今はまだ人生を語らず』までが本当に熱かった第一期からの拓郎ファンの季節だったのではないでしょうか」等と論じている[15]

再発売

1986年CD化され、1990年にはCD選書で再発売されたが、「ペニーレインでバーボン」の歌詞に「つんぼ桟敷[注釈 3]」という部分的に差別用語とも受け取れる言葉が含まれていることから、いずれも生産が中止された[4]

2006年に行われた『吉田拓郎 & かぐや姫 Concert in つま恋 2006』では、該当部分を「蚊帳の外」と歌い換え、この曲が披露された。また、2009年10月7日に完全生産限定で発売されたデビュー40周年記念CD-BOX『Takuro Premium 1971 - 1975』に収納された紙ジャケット盤には「ペニーレインでバーボン」は収録されておらず、タイトルも『今はまだ人生を語らず-1』となっている[17]

CDの発売中止が続き、実質廃盤状態だったが[4]2022年12月21日Sony Music Directから「ペニーレインでバーボン」を収録して復刻することが発表[18]。同内容で音楽配信等もスタートし、事実上解禁された(マスタリングが違うため『今はまだ人生を語らず-1』も並行してリリース中)。

収録曲

  1. ペニーレインでバーボン
  2. 人生を語らず
    • 70年安保で挫折と敗北を経験した若者に対し、威勢よくメッセージを叫ぶよりも「臆病者」という烙印を怖れる必要はない、人生の構築途上にある者は「人生」という言葉で過去を振り返るべきでない、などと歌われる[4]。「考えるより前に走り出すことを信条とする〈見る前に跳べ〉」的積極性が色濃い[3]。天空に噛みつくようなシャウト、パフォーマーとしての際立った個性が発揮された楽曲で、言葉の意味よりも疾走感が生み出すリアリティーを選び取るべき、というメッセージに感応したビートたけしが影響を公言していることでも知られる[3]。代表曲の一つで、拓郎ファンの菅田将暉がプロとして音楽をやることになったのは、同じく拓郎ファンの明石家さんまの番組『さんまのまんま』(フジテレビ系)で本曲の弾き語りを見たレコード会社の担当者に誘われたことがキッカケ[19][20]
  3. 世捨人唄
  4. おはよう
    • 作詞:岡本おさみ
  5. シンシア
  6. 三軒目の店ごと
  7. 襟裳岬
    • 作詞:岡本おさみ
  8. 知識
  9. 暮らし
  10. 戻ってきた恋人
  11. 僕の唄はサヨナラだけ
  12. 贈り物

参加ミュージシャン

脚注

注釈

  1. ^ 「三軒目の店ごと」のみ。
  2. ^ 南沙織の愛称で、「シンシア」は、彼女のクリスチャン・ネームである。
  3. ^ 本来は『江戸時代の劇場で、正面2階桟敷の最後方の席の事を指し、舞台に遠く、役者せりふがよく通らないところ』または『関係者でありながら情報や事情などを知らされないこと』を意味する言葉である[16]
  4. ^ 「シンシア」のみ。

出典

  1. ^ “今はまだ人生を語らず(完全生産限定盤) | よしだたくろう”. ORICON STYLE. 株式会社oricon ME. 2022年12月30日閲覧。
  2. ^ よしだたくろう 今はまだ人生を語らず
  3. ^ a b c d e f g 桑原シロー (2023年2月7日). “吉田拓郎『今はまだ人生を語らず』が捉えた74年の心情とシンガーソングライターとしての魂――SACDの豊穣な音を聴く 【SACDで聴く名盤】第16回”. Mikik. タワーレコード. 2023年2月20日閲覧。
  4. ^ a b c d 諸井克英「今はまだ人生を語らず : 《吉田拓郎》が描く「生」の継続」『同志社女子大学生活科学』第50巻、同志社女子大学生活科学会、2017年2月、57-58頁、doi:10.15020/00001534、ISSN 1345-1391、NAID 120006328032。 
  5. ^ 名田貴好; 橋倉正信『青春音楽グラフィティ タイガースからYMOまで』集英社集英社文庫 COBALT-SERIES〉、1981年4月、362–367頁。 
  6. ^ 帆苅智之 (2022年12月21日). “これだけはおさえたい邦楽名盤! 『今はまだ人生を語らず』で確信するアーティスト・吉田拓郎の桁違いの風格”. OKMusic. OKWAVE. 2022年12月27日閲覧。
  7. ^ 「よしだたくろうと10人の仲間たち」『深夜放送ファン』自由国民社、1973年9月号、p12-13
  8. ^ a b c d e 里木陽市『学生街の喫茶店はどこに』アートデイズ、2007年、20–21,24–29頁。ISBN 9784861190988。 
  9. ^ a b c d pennylane | あの頃僕らはペニーレインで公式サイト ペニーレインとは
  10. ^ 70年代原宿の象徴 「ペニー・レイン」が復活 - 原宿新聞、原宿ペニーレインを舞台化!! - 文化通信.com、拓郎名曲の舞台 主演に“インディーズの歌姫”抜てき
  11. ^ a b c  『Vol.14 フォークソング+朗読劇 レコード会社の新しい試み』
  12. ^ スタイリスト 中村のんが選ぶ、未来に残したい東京ファッション&カルチャー・スポット8 、原宿ペニーレーン。、拓郎の東京 ~地名が出てくる吉田拓郎の唄~(2)
  13. ^ 泉麻人が綴る、原宿・表参道「オシャレカルチャー」変遷史
  14. ^ a b 若者が憧れた 重松清「あの頃僕らはペニーレインで」:朝日新聞(Internet Archive)
  15. ^ 不定期連載 僕の髪が肩まで伸びて よしだたくろう! 第13回 『今はまだ人生を語らず』その1序章 みうらじゅんによる勝手に全曲解説、不定期連載 僕の髪が肩まで伸びて よしだたくろう! 第15回 『今はまだ人生を語らず』その3-B面勝手に全曲解説
  16. ^ “聾桟敷とは”. コトバンク. VOYAGE GROUP. 2022年6月18日閲覧。
  17. ^ Sony Music Shop : Takuro Premium 1971 - 1975 - 参考リンク
  18. ^ “吉田拓郎、『今はまだ人生を語らず』など2作品が完全復刻 名曲「ペニーレインでバーボン」も収録”. CDジャーナル (音楽出版社). (2022年10月31日). https://www.cdjournal.com/main/news/yoshida-takuro/100360 2022年11月1日閲覧。 
  19. ^ “菅田将暉が演じた若き日の自分役にさんま感心!「芝居、好きなんやな」”. シネマカフェ. (2015年12月26日). http://www.cinemacafe.net/article/2015/12/26/36701.html 2023年2月20日閲覧。 
  20. ^ “菅田将暉キッパリ「結婚願望あります」 尻フェチを告白「ちょっと垂れているぐらいが好き」”. スポニチアネックス. (2020年8月22日). https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2020/08/22/kiji/20200822s00041000271000c.html 2023年2月20日閲覧。 
シングル
配信
  • That's it やったね
  • 慕情
アルバム
オリジナル
ベスト
エレック

たくろうベスト・コレクション

CBSソニー
Sony Music Direct
フォーライフ
FLME
avex trax
  • From T
ライブ
CD-BOX
  • ONE & ONLY
  • 吉田拓郎 '79-'90
  • LIKE A ROLLING STONE 1970〜1974
  • TAKURO YOSHIDA IN THE BOX
  • Have A Nice Day
  • Takuro Yoshida Premium 1971-1975
その他
  • 古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう
  • 真夏の青春
  • クリスマス
映像作品
  • ONE LAST NIGHT IN つま恋
  • ONE LAST NIGHT IN つま恋 Part II
  • イン・ビッグ・エッグ Part 1
  • イン・ビッグ・エッグ Part 2
  • コンサート・イン・つま恋 1975
  • TAKURO YOSHIDA TOUR '91“detente”
  • '89 TAKURO YOSHIDA IN BIG EGG
  • '90 日本武道館コンサート
  • '93 TRAVELIN' MAN LIVE at NHK STUDIO 101
  • '79 篠島アイランドコンサート
  • '82 日本武道館コンサート 王様達のハイキング
  • 1996年、秋
  • 感度良好ナイト in 武道館
  • 吉田拓郎 LIVE 〜全部だきしめて〜
  • 101st Live 02.10.30
  • 吉田拓郎・かぐや姫 コンサート イン つま恋 1975
  • TAKURO & his BIG GROUP with SEO 2005 Live & His RARE Films
  • Forever Young Concert in つま恋 2006 (吉田拓郎・かぐや姫)
  • 歩道橋の上で COUNTRY BACK STAGE DOCUMENT
  • 吉田拓郎・かぐや姫 コンサート イン つま恋 1975+'79 篠島アイランドコンサート
  • 吉田拓郎 LIVE 2012
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オリコン週間LPチャート第1位(1974年12月23日-1975年1月27日)
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