コヒーレンス長

コヒーレンス長(Coherence length、コヒーレンスの長さとも言う)とは、超伝導における電子の対(クーパー対)の空間的な広がりを表す長さの尺度のこと。ブライアン・ピパード(英語版)が最初に提唱した(このため、ピパードのコヒーレンス長と言われることもある)。コヒーレンス長ξは超伝導転移温度 (T = Tc) で、その長さが無限大になる。転移温度近傍では、

ξ = α ( 1 T T c ) 1 / 2 {\displaystyle \xi =\alpha \left(1-{T \over {T_{c}}}\right)^{-1/2}}

となる。α は適当な比例係数である(T = Tc で上式は無限大になっている)。

このコヒーレンス長 ξ と、超伝導体に対するロンドンの侵入長磁場の侵入の深さ) λ に関して、

ξ > λ {\displaystyle \xi \,>\lambda }

なら、その超伝導体は第一種超伝導体となる。一方、

ξ < λ {\displaystyle \xi \,<\lambda }

なら、それは第二種超伝導体となる。

BCS理論において、不純物がなく、T = 0 K の状態でのコヒーレンスの長さは、

ξ = v F Δ 0 {\displaystyle \xi \,={\hbar v_{F} \over {\Delta _{0}}}}

である。 = h / 2 π {\displaystyle \hbar \,=h/2\pi } で h はプランク定数、vFフェルミレベルでの電子の速さ( v F = k F / m {\displaystyle v_{F}\,=\hbar k_{F}/m^{*}} 、kF:フェルミ波数、m*:電子の有効質量)、Δ0 は超伝導におけるエネルギーギャップである。不純物が存在する場合のコヒーレンス長 ξ は、ピパードが次の式を提唱した(これは後に正しいことが分かる)。

1 ξ 1 ξ 0 + 1 L {\displaystyle {1 \over \xi }\approx {1 \over {\xi _{0}}}+{1 \over L}}

ξ0 は不純物のない場合のコヒーレンス長、L は電子の平均自由行程である。

関連項目